アルディメオラのライブ当日。
会場がなんとブレーメンではなく、ここからバスに乗ってヴォルプスヴェーデという村まで行かなければならない。アルディメオラめ。あ、ちがった。アルディメオラ様め、だ。
なんだか足が地面に着いていない心地の朝、食欲があんまりないが、やっぱり何か簡単に食べてから出発しないと、多分、今日は一日食べない事になってしまうと心配して、いつもの場所へ。
ニックに付いて来た旅だけど、きちんと一人で出来る事はやるからね!と豪語したので、駅をウロウロして乗り場探し。
到着〜! |
何か一人でしよう!と決めた今回の自分の誕生日。アルディメオラのライブが同じ時にブレーメンであるのを知った事から今回の旅の計画が始まったのだった。
ブレーメンなんて、『ブレーメンの音楽隊』の場所、まさに私の誕生日用じゃないか!! 行きたい行くぞ!!!と鼻息荒かった。
しかしよく調べると、ライブ会場はWorpswedeという。
へ?? なんだって? なんて読むんだ?
するとそれはカタカナにしたらヴォルプスヴェーデと読むらしい事が判明。
それどこよ??!!!とネットサーチすると、
’’ヴォルプスヴェーデ;ブレーメンから東に約15キロのところにある芸術家村。周囲10数キロに渡り、悪魔の沼地と呼ばれる湿地帯がある。雨が続くと、ここから周囲に増水し、交通が遮断される。”なんてある。
怖い。怖すぎる。。。
なんだよ、どこなんだよ、なんでそんな場所でするんだよ。。。
何が怖いかって、悪魔ではなく、カエル。沼地といったら、、、カエルじゃないか。
今こうしてカタカナでその名を打ったら見るだけで気分が悪い、それくらい苦手。
時は8月、遭遇する確率高し。
一人でそんなものと闘えないわ。。。。。。
ああ、私の一人旅〜!!!
結局ずっと強がりを言っていはいたが、悩みに悩み最後の最後、まさに旅の前夜、しかも12時過ぎてからになってからやっと、ニックが付いてくる事を承諾したのだった。無念じゃ。。。
しかしこうして現地に実際に来ると、天気も良好、明るい日射しの下で複雑な嬉しさのニック連れの旅なのだった。
まずはライブ会場を下見しておきたい!!ということでバス停からの一本道を上へ歩いて向かったのがココ。
なかなか名の知れたライブハウスらしい。
一応満足したので、ここら辺でオバカさんを振りまくのは止めて退散しよう、、と思ったら、私達と同じ考えを持った人が登場した。
その男性もあちらこちらキョロキョロして入ってきたと思ったら、やはりそのエンジニアらしい人に私達と同じ質問を開始。ニックと2人で笑ってしまった。
そして私がトイレを借りてライブハウスから出ると、待っていたニックがこれから3人でライブまでの時間をヴォルプスベーデ観光しようか、と誘っていたのだった。
そんなわけで、一人のはずの旅はニック連れになり、そして一人また増えたのだった。
彼の名前はデイヴィッド、アメリカ人だと言った。
インフォメーション・センター |
ドッグボールがいい。 |
こんな所まで来させやがって、アルディメオラ(様)め!!とはちょこっと思ったのも事実だが、ここヴォルプスベーデは芸術村、私が今まで知らなかっただけで、見る物がたくさんある。だから行く価値は大いにある場所だ。
村はあんまり大きい訳じゃないし、着いてからインフォメーションセンターもすぐに見つかるだろうし、それで簡単に済むと思っていた私は、だからインフォメーション・センターに着いたものの、’’見所はここです!’’的情報が一切なくて、焦った。
芸術に詳しい人しかやっぱりこんな村までこないから、見所なんてわざわざ教える必要はないのだろうな。。。と後悔するも、良かった、ちらとでもネットサーチしてきて!!と思った。
一応地図を買って、下調べで見たうろ覚えの記憶を頑張って伝え、イマイチ理解してはもらえていなさそうなスタッフに頼んで地図上に赤丸をしてもらった。
あぁ、こんな時にリカやともこちゃんがいたらなぁ!とまた思ってしまう。
標識もなく、どこをどう歩いているかよく分からないヴォルプスヴェーデ。地図を片手にキョロキョロしながら道を歩き始めた。
『カフェ・ヴォルプスヴェーデ』 有名なカフェらしい。 |
豪快に飲んでらっしゃる。。。と思ってみていたら私も喉が渇いてきた。
ダラけ過ぎだろ、おい。。。 |
グローセ・クンストシャウ美術館 |
カフェの横にある美術館。
さすが芸術家村というか、個性的でありながらも奇をてらったような物は一切なく、しっかりと芸術を感じることが出来るものばかりだった。
表現主義建築家ブルーノタウトによる建物。 ''Kasegloche'' =チーズカバーというニックネームがある。 |
’’表現主義建築の形態は、先行するアール・ヌーヴォーやユーゲント・シュティールから分離することによって表現主義建築を定義する役割を果たした。アール・ヌーヴォーは装飾に関して構成的な自由を保持していたが、表現主義の建築家たちは部分的にではなく建築全体の形態を自由に解放するべく努めた。’’
wikiにそうあったが、表現主義建築なんて言葉があるのも知らなかったよ。。。
ではいったい、表現主義とはなんだ??と思って調べると、
’’日本語に翻訳してしまうとわからなくなってしまうが、英語では、「表現主義」(英: Expressionism)の語は「印象主義」(英: Impressionism)の語と語形の上でも対立している。’’
とあった。
日々勉強、、とつぶやくには知らない事だらけすぎる。
この時ほど一人旅じゃなくて良かったと思った事はない。 |
さすがドイツ、ちょっと木々の間に入ると薄暗く、まるで赤ずきんちゃんの世界だ。
この時が一番、一人じゃない旅だった事を喜んだ時だった。
しかしいったい、なんでこんな道を歩いてるんだ? 私達3人以外は人がいないじゃないか。他にもルートあるだろ? さては私が一人旅じゃない事を有り難がるとふんでわざわざ歩いているな、、とぶちぶち言う私。
バルケンホフ |
ヴォルプスヴェーデ派の代表画家、ハインリヒ・フォーゲラーの暮らした家という。
私はハインリヒ・フォーゲラーについてはこの家が描かれた絵しか知らない。
だからこうして実際に目の前にしてみると、まるで自分が絵の中に紛れて行く感じがして面白かった。
調べると、1901年、かのリルケがフォーゲラーの誘いでこの家に滞在していた、
そして1903年には美術論集『ヴォルプスヴェーデ』を書いたという。
私はへえ!!というビックリ音しか出てこない。リルケが住んでたのか〜、そんな美術論集が存在するのか〜、とこの地に対する興味もここに来てなおさら湧いて来た。
彼はここで知り合った彫刻家クララ・ヴェストホフと結婚、彼女の薦めでロダンと知り合ってそしてパリへと旅立っていく。ロダンのもとで数年を過ごすが、そのうちに確執、ミュンヘンに移住することになったらしい。
心理テスト |
ジッと見ていると、まるで心理テストでもされているみたいな感覚を覚える。
そのうちにだんだんと不思議〜な均衡感覚さえも体に感じるようになった。多分それは地面が斜めなせいなのだろうけれど、立っていると、不思議な歪んだ世界に入り込んだような、でも、いい意味ではなく居心地が悪い感じがしてくる。
不健康な精神を感じるのはなぜだ?
やっぱりドイツの心理テストとかで、「それはあなたの精神の現れです!」ってことか??
不気味だよう。。。。。。。。
遭遇しませんように、、、とお願いしながら歩いていた。
やっぱりニックがいて、(プラス、デイヴィッドもいたけど)、正解だな。。。
怖いよう。。。。。。
もう本当にどこをどう歩いているか方向音痴の私はギブアップ。
目をキョロキョロさせてると、こんな、いかにも’’入ってらっしゃい’’風な景色が目に入ったので迷わず中に入って行った。
Galerie Cohrs-Zirus |
中にはとても上品で優しそうな女の人がいて、ゆっくりしてね、と声をかけてくれる。
彫刻好きの私には素晴らしい空間だった。
Joachim Karsch (1915-1945) 『Trinkender Knabe』1937 |
Alte Frau im Sessel 1973 |
Helmuth Westhoff(1891-1977) フィグとリンゴ(1909) |
結構時間をかけてゆっくり見て回った。
小作品ながら、面白いものばっかり、欲しいものばっかり。
いいなぁ、こういうのに囲まれて暮らしていたら先ほどの女性のように上品になれるのかしらね、、と思ったりした。なるわけないか。
ちょうどその時にまた出てきてくれた彼女が裏庭にも彫刻があると教えてくれた。
他にも、これから予定している展示会とかのフライヤーを手渡してくれる。そして私達がロンドンから来ている事、この日も日帰りな事を伝えると、「あ、そう!」と言うのだった。
この、’’あ、そう!’’としか聞こえないドイツ語、今回の旅でとっても気に入ったものだった。本当に、日本語の’’あ、そう!’’って聞こえる。
とにかく、ドイツ語なんてチンプンカンプンながらも彼女と話していると、「お茶の時間にしましょうか」と少しでも一緒に長く時間を過ごしたくなるような、そんな女性だった。
加えてそのフライヤーには私好みの彫刻がたくさん載っているものだから、もうこのヴォルプスヴェーデに訪れる機会なんて多分2度とないんだろうな、、となんとなくシンミリしてしまった。
お礼をみんなでしっかり言ってギャラリーを後にした。
裏庭。
ようするに、墓地だった。
墓碑に、可愛いなんて言ったらいけないのだろうか。
しかし可愛い。さすが、芸術村。
パウラ・モーダーゾーン=ベッカーの墓 |
そこで画家オットー・モーダーゾーンと出会い、1901年に結婚。
1907年に待望の子供が生まれるが、塞栓症にかかってしまい、31歳でこの世を去った。
念願の出産後わずか8ヶ月ほどで急逝してしまうなんて可哀想に。。。
夫のオットー・モーダーゾーンもここで眠っている。 |
途中で見た結婚式 |
アイスクリーム・バンで楽しそう。 |
しかし道路に出ると、途端に気持ちがデカくなる私。
男2人は放っておき、一人でぶらぶらすることにした。
そしたらこんな物に出会う。素敵。
方向音痴だからな、一人でいると不安になる。だからさっきのライブハウスを見かけて、もしものためにしっかりと場所を頭に入れた。
そろそろライブの時間が迫ってきた事だし、腹ごしらえしておこうかということになって、適当に入ったお店で適当に頼んだ私のピザ。最初から食べる気なんて全くないからみんなでシェア出来るもの頼んだら私も一切れくらい食べれるし、、と思ってピザ。
美味しそうだったし、事実美味しかったんだけど、もう、なんか、やっぱり喉を通らない。
アルディメオラのライブがもう始まる、アルディメオラが近くにもういる、と思ったら、
食べ物が喉に通らない。。。
アホだね〜!!とニックに笑われながらも、デイヴィッドの、「いや、でも、気持ちは凄く分かるよ」という言葉に慰められながら、
2人の会話も私の頭の中を素通りしていくのだった。
そもそも料理が出てくるのが大幅に遅れたため、かなり時間が近づいてしまっていて、あ〜落ち着かない、今何時?ってのを何回も繰り返していたのだけど、自分に’’バカだね〜’’を繰り返してなんとか態勢を立て直す。ファンはバカだ。
デイヴィッド。結構年はいっているらしいが、さすが金銭的に余裕があるアメリカ人は若いな!
毎年夏は一ヶ月休んでヴァカンスを楽しむという彼、話に出てくる所を高級リゾート地ばっかり。さぞかし今回のこのヴォルプスヴェーデまでの道のりはいつもと違ったことだったのだろうと尋ねると、「そこどこなんだ?って感じだったよ〜」と。
しかしそう言っている時でさえ、ここはどこなんだ?俺どこにいるんだ?だったと思う。何回言ってもヴォルプスヴェーデっていう名も覚えないし、覚える気もなさそうだったし。
しかもさすがアメリカ人、「何でみんな英語話さないんだよ〜!」と何回もおっしゃる。
ドイツだ・か・ら!!と私が言っても、キョトンとした顔を見せていた。面白い。
デイヴィッドはものすごい音楽通でいろんな話が聞けて楽しかった。パコデルシアのライブにも行ってるしな。そんな彼はアルディメオラの大ファンで、だからそのためだけにはるばるやって来たヴォルプスヴェーデには全く興味なしな気持ちもよく理解できた。
「もしunlimited resourcesがあったらね〜」
と言った。
アンリミッティド・リソーシズ?!
ぶっ☆と思わず吹き出しちゃったよ。
見るとデイヴィッドはドン引きしている。
そりゃ〜、金持ちさんは無言になるしかないわな。
ニック、おいおい、彼の意味したところは、’’スケジュールを調整するのって難しいよね’’だけだったぞ、きっと!
静かになったデイヴィッドを眺め、嬉しそうにニコニコしているニックを見ながら、おかしくておかしくて、笑いが止まらなかった。
そういうニックはとっても可愛いと思う。
ピザをきっかり一口だけ食べた私はまだグダグダおしゃべりしている2人の男達を無言でそれと見せないように追い立てながら、ライブ会場へとうとう向かった。
ほら〜、2人がグズグズしているから列が長くなっているじゃないか〜!!と文句言う私なのだった。
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