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とんでもない男’’オーソン・ウェルズ’’ |
テレビではよく放映しているが、今まで一回もしっかりと最初から最後まで観た事がなかった映画『市民ケーン』。
念願叶って、やっとスクリーンで観ることが出来た。
今まであちこちのシーンが繋がった端切れのパッチワークみたいだったのが、今回ようやく一つの映画となってくれて、しかもそれはを思っていたよりも遥かに素晴らしく、歯科矯正が始まる前に観る最後の映画だと分かっていたので今日は思い切りポップコーンを食べたようと思っていたのに映画が始まったらすっかり忘れてしまったほど、見終わって直後は席をすぐに立てなかったほどだった。
今頃になってオーソンウェルズにやられちゃったんである。遅いね。
男の魅力はルックスでは決してないなと改めて思わせてくれたオーソンウェルズ、彼の幼い頃の説明には、
’’詩、漫画、演劇に天才的な才能を示す子供であったが、傍若無人な性格で人間関係に問題があり、母を9歳で亡くし、父はアル中の発明好き、祖母オカルト好きで彼とは嫌い合う仲であった。学校では怪談話やホラ話、手品の腕前などを披露した。ある日肥満が原因でイジメられるとトイレに駆け込み、赤ペンキで顔中を塗りたくり、大怪我をした振りをして相手を狼狽させ、以降はいじめられなくなったとのエピソードも残る’’
とある。
やはり、、、奇人だったのだ。
そんな彼が1941年、たった25歳の若さでありながら、監督・脚本・制作・主演をこなしたという、とんでもない作品が『市民ケーン』。
白黒映画は映画館で、、とそのカメラワークから常々思うけれど、この映画に関しては、とにかく彼がどんなに魅力的で非凡だったかが大きなスクリーンから溢れ出る溢れ出る!
だからもし映画館でリバイバル上映があったら絶対に観た方が良い映画第一位だと思った。
でも当時は興行的には失敗していた。
新聞王であるウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルだとされる『市民ケーン』は彼の私生活を暴露しているとハースト系の新聞から猛バッシングされ、上映出来ない映画館も続出するなど、’’世界映画史上作品ベスト10’’で40年間第一位の座についている現在の評価からは想像出来ない扱いだったという。
一回でもビジネス的にコケたらハリウッドでは居場所がなくなるのは今と同じで、以降、彼の映画製作は苦しくなっていく。
実は私にとってオーソンウェルズと言えば、雑誌『リーダーズ・ダイジェスト』に収まっていた『イングリッシュアドベンチャー』のドリッピー。ナレーションをしていたのがオーソンウェルズだったのだが、毎月届けられるようになってしまったそのテープと小冊子の支払いに頭に来た母が父に報告した際に、
「ほぉ! オーソンウェルズか! ちょっと聴かせてご覧! あぁやっぱり凄いね、ナレーションと言ってもさすがだね」
と父がなぜか興奮気味に母そっちの気で話し始め、しまいには、
「ちゃんと聞いて耳で覚えるようにしなさい」
とまで言われてしまった。
私はもうその時点で何度も断ろうとしていた教材の交渉が上手く行かないことの訳が分からなかったので、そう父親に言われても’’はぁ??’’だったのだけど、
そんなにすごい人なの?と訊くと、
「オーソンウェルズは第一級の役者だよ、もうあんな役者は出ないねきっと!」と最後のほうはしみじみとした口調で言い、続けて、
「もったいないね、ああいう俳優が引っぱりダコにはなれないんだね、あんなに才能があっても後半はパッとしないでね、こういうことしててね、、、」と言うとその教材をじっと見ていた。
結局、その後少しして、物語がやっぱりつまらないからと止める事を決め、再度交渉し、お金をもう払いませんだから送ってこないでください、、で終わったのだったが、それからもまだしばらくは送られてきていたのがパッタリと来なくなり、そのうちに、どうやらリーダーズ・ダイジェストの方に問題が出たらしいと聞くようになった。
家には結構な数のドリッピーのテープ達が階段の隅に居座る事になったが半端な数なので誰かにあげる事も出来ず、見る度にちょっと嫌な気分になった。
それが最初で最後の私の’’教材’’だ。
教材という言葉自体を当時はよく知らずにいたそれまでとは違い、あれがいい教訓となり、それからは’‘教材’’という名前が付く全てのものに嫌悪感を持つようになった。
あの時にやっていれば今の私のショボショボな英語発音ではなかったのであろうか、、、とも思うが、仕方がない。
それはともかく、そんなオーソンウェルズの私の中での立ち位置が、『市民ケーン』を見た事で全く変わってしまったのだった。
父が言っていた通り、オーソンウェルズは第一級の俳優だった。
そして映画の中のあの有名な言葉’’バラのつぼみ’’の謎が解けた時に、父がこの映画をどんな思いで観たのかと思ったら心臓がぎゅっとして喉が痛くなった。
追記;
ところで市民ケーンはコロンボシリーズのVol.44『攻撃命令』にも出てくる。
男の人同士、「いいですね〜あの映画」と、言っている所を見ると、
やっぱり男の人にとってこの映画は深く思うところがあるようだ。
追記2;
イングリッシュアドベンチャーってどうなったんだろう?と久し振りに今回思い出したので検索したら、なんとシャーリーズ・セロンとジュード・ロウだって!
え?!!
と驚きの発見だった。
頑張ってるんだね、イングリッシュ・アドベンチャー。
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’’とてもパッとしてる’’ |
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’’引っぱりだこな’’ |
2人です。
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ちなみに私の好きなジュードロウの顔はコレ。 |
大きな追記3;
’’あんなに才能があっても後半はパッとしないでね、、’’とオーソンウェルズのことを父は言っていたが、
ちょっと待て!
リタ・ヘイワースと結婚してた時期もあるってよ!
リタ・ヘイワースだってよ!!
オーマイガーーーッ!!!!!!!
充分パッとしてるよ。。。
ちなみに、’’彼自身は持ち前の茶目っ気さでもって、チープな仕事も含めて人生を喜劇的に眺めてそれなりに楽しんでいた’’、とwikiにはあったが、それを読んだらもっとファンになった。今まで共演者のジョセフ・コットンの方にばかり気を取られていてごめんね。