『ジャガイモのビンボー炒め』とは、
よく母親が父のために作っていたものなのだけど、
作る度に「こんなものが大好きなんだからね〜。こんな、他にはなんにも入っていないビンボーそうな料理なんて言えない料理、人が見たらなんて言うかね〜」とちょっと恥ずかしそうに言っていた料理。母にしてみたら、’’私が楽してコレを作っている訳ではないのよ’’アピールしたいのだろう。
確かに父はこれが好物だった。
父親の貧乏な子供時代に母親が作ってくれたというから、父にとっては母の味だったのだ。
お金を作るようになって自由人となった彼は時間もマチマチで、一緒に揃ってご飯を食べたことなんて珍しいことだった。だから子供たちは帰ってきた父が食べるのを面白そうに眺めていた。彼の前に置かれたお膳は子供の私には特別に思えた。
大きな木のお盆にちまちまとした小皿が置かれているのだけど、なぜかとっても美味しそうに見えた。
だからもうとっくに食事を終えた弟もまたお腹が空き出して、ねだったりしていたものだった。
そしてそのお盆の中にはこのジャガイモが登場することが多かったと思う。
父親も亡くなり、おこぼれでもらうこともなくなってずっと食べることもなかったのだが、私もいい年になってのある日、お腹が空いてキッチンに行くとなにも食材がないことに気が付いた。
あったのは卵とジャガイモ中1個。
一瞬、なんちゃってキッシュとか、ガレットみたいなのを作ろうかと思ったけれど、ニックと私の分には足りそうもないな〜と考えあぐねた時に思い出したのがこのビンボー炒め。
ニックにはどうだろう??と思ったけれど、一度思い出したらモーレツに食べたくなったから作った。
小どんぶりに炊きたてのゴハンをよそって、上にそのビンボー炒めと目玉焼きを置いた。ゴマとラー油を上から垂らし、ニックに出した。
そうしたら反応がものすごく面白かった。
「びっくり! なにこれ? ジャガイモ?! おいしーね〜!!」
だったんである。
良かった。さすがポテト王国から来た男だ。
レシピは簡単。料理と言えない料理のレシピだから。
ジャガイモを好きなだけの量をこんな感じで切って、
油で炒めて塩、コショウ、ブルドッグソースを絡めただけ。
もしあったら、そこにナツメグやカレー粉をまぶして炒めてもいいし。どんなスパイスでも絡められるまさにジャンクな料理。
そういえば、日本人の男の子に作った時も、受けが良かったっけ。
もしかしたら、男の人は一般的にこういう料理が大好きなもんなのかな、、とも思う。
今ではお家ゴハンの定番になっている。
偉大なブルドッグソースに感謝! ロンドンで買えることにも感謝だな。
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