ちょっと前のことになるけれど、ピカデリーにあるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、通称RAに行った時のこと。
この展覧会、今まで見た中では一番面白いものが集まっていて、ものすごい展示物の数で所せましな中に人たくさんという苦手な状況にもかかわらず、ブロンズ好きの私は舞い上がりっぱなしだった。
チケットは14ポンドというロンドンにしては高い設定だったけど、どうしても行きたかったのはこの写真の垂れ幕にもなっているブロンズを宣伝用ポスターで見かけた時に圧倒されたから。
すんごい顔だな!!と、一瞬にして惚れてしまったのだった。
それで家に帰ってネットでどんな展覧会なのか調べたら、大きな話題になっているのは別のブロンズで、1998年にシシリ―の漁師のネットで拾われた「Dancing Satyr」というもの。調べた結果、4世紀のギリシャ芸術だと分かったという。
へぇ~~、その漁師さんアート心があったのかね~、私がそんなの拾っても、ガラクタだと思って捨てちゃうよな、きっと、、、なんて思っていた。
そんな事を思いながら、ずっとタイミングがつかめないまま時が過ぎ、もうそろそろその展覧会も終わってしまうぞ、、多分行けないぞ、、と思っていると、ある日いきなり数時間だけポッカリ時間が出来た。
もうこれを逃したら次はない、と体調が良くないニックを誘い、あたふたと出かけて行った。
前売りチケット買ってなかったけど大丈夫だったことに喜びながら一番最初の部屋に入った途端、いきなり中央にド――――ンと置かれていたのがその「Dancing Satyr」だった。
2メートルほどもあって、とにかくデカイったらない。
その緑色の体がライトの下で、空に飛ぶような姿をして目の前にあった。
つい入口に立ち止まってしまったまま動けずにいた自分に気付き、やっと周りを見渡す余裕が出来ると、その部屋は円く、なんと全ての壁が真っ青。
まるで紺碧の海の底にいるようだったから、まるでそのブロンズが人魚のように優雅に泳いでいるようにも錯覚してしまうほどだったのだけど、
実はSatyrとは尻尾があって長い耳があるギリシャの半人半獣の森の神サテュロスのことで、酒と女が大好きなんだって。
そんな神が楽しく踊っているのだな~と、彼の周りをグルグルグルグル歩いてみたけれど、
やっぱり海の底にいるみたいに感じた。
シシリーの海をずっと泳いでいたからこんな青にしたのかな、
すごい演出だな、
と、RAのセンスに脱帽。
そういえば、来る前は、そのシシリーの漁師さんは芸術とガラクタの区別が出来てすごいなぁとか思ってたけど、こんなのが網にかかったらそりゃ~ビックリたまげただろうな。
(しかし後でもらったパンフレットを読んでいたら、同じ漁師さんがその前年の1997年にこのブロンズの左足を拾っていたというから、1998年の発見はそんなにビックリでもなかったのかな。。)
結局、私がこの展覧会に行くキッカケとなったブロンズはずっと奥の方の部屋に他のブロンズたちと一緒にちょこんと置いてあった。
宣伝にもなっていたものだから、なんとなく、「Dancing Satyr」みたいに一点隔離の豪華展示なんだろうと勝手に期待していた目がそれを見た時には最初とっても驚いてしまった。
スペースのせいか? 何故だ?
さっきの青い部屋のような照明を当てて他と離して飾ってあげたらさぞかし迫力があっただろうに、、と少し残念にも思ったけれど、でも、それでも素晴らしさには変わりなく、逆に力入れて効果を狙った展示よりも本来の姿がそのまま見れたってことで良かったのかな。
白いライトの下でフツーに置かれていてもその顔は凄かった。
ちょっと怖かったくらい。
タイトルは「Damned Soul」だって。やっぱり怖い。
と、そんなわけで、聞けば150点もあったというこの展示会、14ポンドじゃ安過ぎる!有難い!!と感激しながら帰途に着き、この後もともと調子が悪かったニックと二人して寝込む事になるのだった。。。
ニックには本当に悪いことをしてしまった。
こういう展示会は私はつい気合入れたくなってしまって、丸一日開いた時とか気持ちに余裕がある時なんて思っては日が過ぎて行くけれど、目を付けていた展覧会がオープンしたらたとえそれが短い時間でもすぐに行っておいたほうがいいな、、と痛感したのだった。
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