2013年6月2日日曜日

タパス







遅くなってもスペインではご飯は食いっぱぐれない、、という訳ではない。


日曜日は別。


その代わりにどこにでもタパスバーがある。


見るからにいかにもチェーン店です、、、というここに、ちょっと入ってみた。

ニックはチェーン店を敬遠するが、私は興味津々、有無を言わさずずんずん店内に入った。


タパスは言ってみれば日本の串バーのよう。いろいろ選んでいると最後は結構高くついてしまうのだが、楽しい。


しかも私は結構すぐにお腹がいっぱいになってしまうから、こういうちょこちょこツマミ系だといろんな味が楽しめて嬉しい。






短い串は1ユーロ40、

長い串は1ユーロ80、だっけ?



それにしても、チェーン店ながら、普通においしかった。








すっかり忘れていたスパニッシュオムレツもここで食べてその存在を思い出したので、やっぱりここに入って良かったと思った。


久しぶりに旨いスパニッシュオムレツを食べたな、、、と思ったら、そういえば一時期ブームがあってその時にはよく食べていたのが、いつの頃かだんだん美味しくない物が増えてきて、そのうちに食べなくなったんだったな、と思い出した。



こんなにチェーン店なお店でも美味しいと感じたので、スパニッシュオムレツはやはりスパニッシュ料理なのだな、と当たり前のことを改めて実感した。






サーディンも、生ハムも、ツナも、なんだかもう全てが美味しく思えた。


なんでだろうな。。。







 遅くなっても人はどんどん入ってくる。



私達の後に入ってきたカップルがいて、すぐ隣のテーブルに座ったのだったが、


もの凄く暗い、、というか、何か思い詰めたような表情をしたスペイン人カップルだった。



最初、2人はじっと無言で座っていたが、そのうちに女性の方がカウンターにいって2個だけのタパスを持ってきた。男の人はそれを見て何かを言いたそうに口を開いた。


その表情をみたので、何を言うんだろう、と待ったが何の言葉も出てこなかった。


それでそのタパスを一口で放り込むと、またじっと前を見て無言のまま動かなかった。


ドリンクもなかったので、間を紛らわせることもないままそのままお互いじっとしている。


そのうちに男の人が立ち、一つのタパスを持って戻ってきた。


すると、テーブルに座ってからニックの皿の方をじっと見ている。


ニックはもちろんさらにたくさんタパスがあるし、私は2個でお腹が一杯だから後はもう全てがニックの物なんである。



こいつ、よく食うなあ、、とか思っているのかな、、と思っていると、また彼はパクッと自分のタパスを平らげた。




そしてまたじっと前を向く。2人とも全然喋らない。やはり何となく思い詰めた顔だ。




そこへお店の人が出来立てのタパスを持ってきた。


長い串の、ステーキタパスでガーリックとネギと一緒にとても美味しそうな匂いがする。


隣のテーブルのカップルはその皿をしばし眺めたが、断ったので、店員はすぐにこっちに皿を向けた。


ニックは少し考えていたので、食べてみれば?とすぐさま言おうと思ったのだが、その私の一言を躊躇させたものがあった。


それは隣のテーブルの彼の視線。


もう、じっと、視線を揺らすことなく、そのタパスを見ているんである。


えっと、、、どうしよう、、、



と、こちらがうろたえるほどの視線。




その彼は、どう見ても、とてもとても食べたそうなんである。



どうしよう、悪いかな、頼んだら、なんか、悪いのかな、、とまで考えてしまったが、


自分のあまりのバカさ加減に自分で早速呆れたので、やはりニックを後押しした。



じゃあ、、と言って嬉しそうにニックは一つを取り、自分の皿に置いたのだったが、


ニックがそれを食べ終わるまでにもその隣の男の人はチラチラとニックの方を見ていた。



その後、すぐに2人は店を出て行ったのだったが、なんとなく、気になってしまったのだった。




帰り道、ニックにその話をしてみた。



「ね、隣のカップル見た? 特に男の人、なんか、不思議じゃなかった?」と。



するとニック、



「ああああああ! あの、寂しそうな、なんか、食べたそうにしていたのに食べなかった人ね! つい最近職でも失ったのかな〜なんて想像しちゃったよ、だって飲み物もなんにもなかったしね、我慢していたっぽいよね。だからステーキタパス食べにくかった。」と。




ああ、やっぱり、ニックもそんなことを思っていたか!となんか気持ちが微妙な夜になった。



スペインでは今どんどんと失業者が増え続けているということが私達の頭にあるからの想像だといいがな。



実は腹の調子が悪い、とか、浮気がバレた、とかじゃいいけどな。



想像力は時にモンスターだしな。




なんてことを考えていたらその延長線上で、そういえば、ロンドンに帰ったらシェイクスピア『オセロ』の舞台観劇が待っているのに一回も読み返してないことを思い出した。




Beware, my lord, of jealousy!

It is the green-eyed monster which doth mock the meat it feeds on.



ジェラシーも想像力だもんね。




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